『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』

本と出合う

斎藤幸平・著(KADOKAWA, 2022)

最終章で「研究者の暴力性」などにも配視されていらっしゃいますので

斎藤さんの優しい心持ちには共感いたします。最終章があって、ホント良かった。

若い学生のみなさんには、ここを熟読してほしい。

ただしやはり、この本を読んだ多くの人は

この著者は、「現場」や「実践」のことをナメているなと思ったことでしょう。

「現場」とは、地味で地道で退屈で懊悩するリアルな修羅場です。

1日や1週間の観察や疑似体験でもってして、

「この現場は、こうだよね」と見切るのは

斎藤さんがおっしゃるように「暴力」そのものです。

理論と実践を、もっと深く強く「往還」することが重要だと思います。

ライトなスタンスで実践のふりをして、それを手際よく理論に直結してみせたとしても

決して多くの人の心を揺さぶることはないでしょう。

かえって、理論のすごみが失われてしまうことを懸念します。

Copied title and URL